棚卸しの目的
不動産を複数持っていたり、相続で資産を引き継いだりすると、「何を、どこに、どれだけ持っているのか」を正確に把握できていないことがよくあります。資産の棚卸しとは、保有する不動産の情報を一覧にして、全体像を確認する作業です。ここでいう棚卸しは、会計や在庫管理の用語ではなく、不動産オーナーが自分の資産を見直すための整理を指します。
棚卸しの主な目的は、次の3つです。
- 資産の全体像を把握し、抜けや見落としを防ぐ
- 収益を生んでいる資産と、そうでない資産を区別する
- 修繕・売却・活用などの判断を、同じ基準で比べられるようにする
一覧がないまま判断すると、目の前の物件だけを見て決めてしまいがちです。全体を見渡すことで、「どの物件から手をつけるか」の優先順位が見えてきます。資産管理の基本的な考え方は、不動産オーナーの資産管理入門で整理しています。
リスト化する項目
棚卸しの第一歩は、物件ごとの基本情報を集めて、一覧表にまとめることです。表計算ソフトなどで、物件を1行ずつ、次のような項目で整理します。
| 区分 | 主な項目 |
|---|---|
| 物件の基本情報 | 所在地、土地・建物の種類、面積、築年数、構造 |
| 権利関係 | 名義人、持ち分、抵当権などの有無 |
| 課税・費用 | 固定資産税・都市計画税の額、保険料、管理費 |
| 利用状況 | 自己使用、賃貸中、空室、空き家など |
| 収支 | 年間の収入、年間の支出(修繕費・管理費など) |
| 借入 | 借入残高、返済額、金利、返済期間 |
所在地や面積、名義などの権利関係は、法務局で取得できる登記事項証明書で確認できます。固定資産税の課税内容は、毎年届く納税通知書や、各市町の税務担当窓口で確認できます。相続した不動産は、名義が前の所有者のままになっていることがあるため、名義の確認もあわせて行ってください。
書類が見つからない場合は、無理に推測せず、「不明」と書いておきます。不明な項目が分かること自体が、棚卸しの成果になります。一覧は、最初から完成させようとせず、分かる項目から埋めていく形で始めて構いません。物件数が多い場合は、まず主要な物件から作り、あとから追加していくと、途中で止まりにくくなります。
収益性・リスクの見方
一覧ができたら、物件ごとに、収益性とリスクの両面から見てみます。
収益性は、まず、収益を生んでいる資産か、そうでない資産かを区別するところから始めます。賃貸中の物件は、年間の収入から費用を引いた手残りを確認します。空き家や使っていない土地は、収入がない一方で、固定資産税や管理の手間といった費用がかかり続けている点に着目します。賃貸物件の収支や利回りの考え方は、不動産投資の利回りの種類と見方も参考になります。
リスクの見方は、次のような観点で整理できます。
- 建物の老朽化が進み、修繕や建て替えの費用が見込まれるか
- 空室が続いていて、今後も入居が見込みにくいか
- 借入の返済が、収入に対して重くなっていないか
- 名義や権利関係が複雑で、将来の売却や相続が難しくならないか
- 災害や周辺環境の変化で、資産価値に影響が出る可能性があるか
これらは、数値だけで割り切れるものではありません。物件ごとの状況を、一覧の備考欄に書き添えておくと、後から見直したときに役立ちます。賃貸経営の運営面からの見直しについては、滋賀で賃貸経営を見直すでも整理しています。
見直しの視点
収益性とリスクが見えてきたら、物件ごとに、これからの方向性を考えます。大きく分けると、次の4つが選択肢になります。
- 保有を続ける:収益が安定している、または将来の利用予定がある場合
- 改善して使う:修繕や設備の入れ替え、募集方法の見直しなどで収益を上げられる見込みがある場合
- 活用方法を変える:利用していない土地や空き家を、賃貸や駐車場などに転用する場合
- 手放す:維持の負担が大きい、または他の資産に組み替えたい場合
どの方向が適しているかは、物件の状態、所有者の年齢や家族の状況、資金の事情によって変わります。税金が関わる判断は、特に慎重さが必要です。売却や贈与、相続などに伴う税金について、個別の判断が必要な場合は、税理士や税務署に確認してください。借入が絡む場合は、金融機関への確認も欠かせません。税金の基本は、不動産と暮らしのお金・税金の基礎知識で整理しています。
見直しの順番は、緊急性の高いものから進めるのが基本です。たとえば、老朽化が進んで安全面に不安がある物件、空室や空き家が長期化している物件、返済が重くなっている物件などです。一度にすべてを決めようとせず、優先度の高い物件から、一つずつ検討してください。
棚卸しの結果を生かすために
棚卸しは、一度作って終わりではありません。年に一度など、時期を決めて更新すると、資産の変化に気づきやすくなります。収支や借入の状況は、毎年変わるためです。更新するときは、前回の一覧との違いが分かるように、日付を付けて保存しておくと、変化を追いやすくなります。
作成した一覧は、家族とも共有しておきましょう。万が一のときに、家族が資産の全体像を把握でき、相続の手続きも進めやすくなります。
一方で、棚卸しをしても、「どの物件から手をつければよいのか」「収支をどう改善すればよいのか」と迷うことがあります。物件が多い、権利関係が複雑、税金や借入が絡むといった場合は、一人で抱え込まず、専門家の視点を借りるのも一つの方法です。賃貸経営や資産の見直しについては、不動産ソリューションの相談窓口でも承っています。
判断に迷うときは、ページ内の相談窓口もご利用いただけます。ご相談内容に合わせて、事業者をご案内しています。
監修:Terra Keystone 代表(宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士)