修繕計画を立てる目的
賃貸物件は、年数がたつにつれて、どこかに傷みが出てきます。修繕は、いずれ必要になる支出ですが、「いつ、どこに、いくらかかるか」が見えないと資金の準備が後手になりがちです。
修繕計画とは、物件ごとに必要になる修繕の内容と時期を見通し、費用の備え方を決めておくための計画です。立てる目的は、次の3つです。
- 必要な支出の時期を見通し、資金を準備しやすくする
- 必要な修繕を適切な時期に行い、建物の劣化を抑える
- 収支の見通しを、修繕費も含めた形で把握する
資産管理の基本的な考え方は、不動産オーナーの資産管理入門で整理しています。
修繕の種類と時期の見方
賃貸物件の修繕は、内容によって時期の見方も備え方も異なります。ここでは日常の小修繕、設備の交換、大規模修繕、原状回復の4つに分けて整理します。
日常の小修繕
日常の小修繕は、入居中や退去の合間に発生する、比較的小さな修繕です。たとえば、水栓のパッキンの交換、照明やスイッチの不具合、ドアノブや鍵の調整、網戸や排水口の補修などがあります。一つひとつの費用は大きくありませんが、物件の戸数が多いほど件数が増え、年間を通した負担は無視できません。
時期は、予測しにくく、入居者からの連絡を受けて対応する形が中心です。そのため、特定の時期に備えるのではなく、毎年ある程度の費用が発生するものとして日常の運営費の中で見込んでおきます。
対応を遅らせると、入居者の不満につながり、退去の理由になることもあります。管理会社に依頼している場合は、対応の範囲や連絡の流れを、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
設備の交換
設備の交換は、給湯器、エアコン、換気扇、インターホン、ポンプなど、使用とともに劣化する設備を入れ替える修繕です。日常の小修繕と違い、1回あたりの費用が大きく、ある程度は時期の見通しが立てられます。
時期の見方は、設備が設置されてからの年数と、使用状況が目安です。設置からの年数がたつと、不具合が増え、部品の供給が終わって修理できなくなることもあります。
備え方としては、物件ごとに設置されている設備の種類と設置時期を一覧にしておくことが基本です。そのうえで、交換の目安の時期を想定し、数年先まで見通して資金を準備していきます。不具合が出る前に計画的に入れ替えるか、不具合が出てから対応するかは、設備の重要度と費用負担の考え方で判断します。
屋根・外壁などの大規模修繕
大規模修繕は、屋根や外壁の塗装、防水、鉄部の塗装、外階段や共用部の補修など、建物全体にかかわる大きな修繕です。数年から十数年に1度の周期で必要になることが多く、1回あたりの費用は、ほかの修繕と比べて大きくなります。
時期は、建物の構造、使われている材料、立地や気候の条件、これまでの手入れの状況によって大きく変わります。年数だけで決めず、定期的に建物の状態を点検し、傷みの程度を確認したうえで時期を見極めることが大切です。
備え方としては、将来の大規模修繕の時期を見据えて、毎年一定の額を修繕のための資金として、ほかの資金と分けて貯めておく方法があります。費用は建物の規模や状態で大きく変わるため、複数の業者に見積もりを依頼して内容を比べると判断しやすくなります。見積もりの比べ方は、相見積もりの取り方と比べ方で解説しています。
退去時の原状回復
原状回復は、入居者の退去後に、次の入居者を迎えるために行う部屋の修繕や清掃です。壁紙や床の張り替え、クリーニング、設備の点検などが含まれます。退去のたびに発生するため、入居者の入れ替わりが多い物件ほど、費用の負担も増えます。
時期は、退去のタイミングで決まるため、読みにくい面があります。ただし、入居期間が長いほど、傷みや汚れも大きくなる傾向があります。年間の退去の見込みを、過去の実績から大まかに把握しておくと、費用を見通しやすくなります。
原状回復の費用をオーナーと入居者のどちらが負担するかは、賃貸借契約の内容と、法令やガイドラインの考え方にもとづいて整理されます。トラブルを避けるためにも、契約の内容を、事前に確認しておくことが重要です。賃貸借の基本的なルールは、賃貸借契約の基礎知識で解説しています。
費用の備え方
毎年の収支の中で、修繕に備える分をあらかじめ確保しておく考え方が一般的です。
備え方の基本は、次のとおりです。
- 修繕の種類ごとに、必要になりそうな時期と、おおよその費用の幅を整理する
- 資金が足りない見込みの場合は、借入の利用や、工事の時期の調整も検討する
具体的な金額や積み立ての割合は、物件の築年数、構造、規模、立地によって大きく変わるため、一律の基準は示せません。
税金の面では、修繕に支出した費用が、その年の必要経費になる「修繕費」にあたるのか、資産として扱われる「資本的支出」にあたるのかで処理が異なります。どちらに該当するかは工事の内容によって変わるため、国税庁の公開情報で概要を確認したうえで、個別の判断は税理士や税務署に確認してください。お金や税金の基礎は、不動産と暮らしのお金・税金の基礎知識で整理しています。
優先順位の付け方
修繕が必要な箇所が複数あると、すべてを同時に行うことは難しくなります。資金には限りがあるため、優先順位をつけて、順番に進めていくことになります。
優先順位を考えるときの視点は、次のとおりです。
- 安全にかかわるもの:外階段の腐食、手すりのぐらつき、雨漏りなど、早く対応すべきもの
- 生活に直結するもの:給湯器、水まわり、空調など、使えないと入居者が困るもの
- 放置すると傷みが広がるもの:屋根や外壁の防水など、後回しにすると費用が増えるもの
- 空室の解消につながるもの:設備や内装の更新など、募集に影響するもの
物件の状況によって、順番は変わります。入居の増加や家賃の上昇が確実に見込めるとはいえないため、費用に見合うかどうかは慎重に検討してください。空室対策としての設備や内装の見直しについては、滋賀で賃貸経営を見直すでも整理しています。
修繕の判断に迷ったとき
「今やるべきか、先送りしてよいのか」「どこまで直すのが適切か」と迷うときは、次の順番で整理してみてください。
- 物件ごとに、建物と設備の状態、修繕が必要な箇所と時期の見込みを一覧にする
- 複数の業者から、状態の確認と見積もりをもらう
- 手元の資金と、今後の収支の見通しを、あわせて確認する
建物の劣化状況を正確に把握するには、専門家による点検が必要です。
物件を複数所有している方や、修繕の優先順位に迷っている方、資金計画に不安がある方は、専門家への相談も選択肢の一つです。賃貸経営や資産の見直しについては、不動産ソリューションの相談窓口でも承っています。
判断に迷うときは、ページ内の相談窓口もご利用いただけます。ご相談内容に合わせて、事業者をご案内しています。
監修:Terra Keystone 代表(宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士)